チック・コリアといえば、なにはともあれ本作を聴かなければ話にならない。リターン・トゥ・フォーエヴァーに代表される72年以降と違って、68年録音の本作当時、チックはシリアスなジャズ・ピアニストだった。そしてその存在を強力にアピールしたのが本作だった。これはチックにとって初のピアノ・トリオ作品であり、ミロスラフ・ヴィトウス&ロイ・ヘインズを伴ったトリオで、スピード感満点の鮮烈な演奏を繰り広げている。タッチの美しさ、正確なリズム感、切れ味鋭いソロ、アイディアの豊富さ、すべてが素晴らしいの一語だ。はじめてこのアルバムを聴いた時、それまでのピアノ・トリオにはない斬新性とチックならではのオリジナリティに驚嘆したものだが、時間が経過してもそれは色あせない。その後、人気作・話題作を次々と発表して人気者になったチックだけど、ここに聴かれる研ぎ澄まされたシャープな感覚の演奏こそ、彼の原点である。オリジナルLPは5曲入りだったが、現在出ているCDは13曲入り。追加曲の多さも魅力である。(市川正二)

Chick Corea: Piano
Miroslav Vitous: Bass
Roy Haynes: Drums

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